INTRODUCTION
出演者紹介
MARO
篠崎史紀
1984年、クラシック音楽を聴くための学生旅行途中、ウィーン留学中のマロと出会った。以来約40年の付き合いの私が見たマロ。
私がマロの音楽家としての特徴としてまず書くとしたら、絶対神である作曲家へのリスペクトをあげる。人類の遺産といえる名作を残した作曲家たちに尊敬と感謝の気持ちが強く、その作品の良さが伝わることを何よりも優先する。
そんなマロも、若い頃は誰もが弾くことはできないテクニックとして難しい曲を弾いていい気分になっていたという。それがウィーンで激変する。ウィーンの友人が弾くシンプルなシューベルトのソナチネを聴き、超絶テクニックとは無縁のしかし音楽として純粋に美しい演奏を聴いて音楽の本質に気づいたと言う。それ以降は作曲家・作品へのリスペクトが生まれ、音楽の良さを伝えるためにテクニックを磨き、和声など音楽の理論を学び、作曲家の生涯を知り、当時の社会情勢も調べ、より作曲家に近くなっていった。クラシック音楽では亡くなってしまった作曲家が多いので「ベートーヴェンに一度聞いてみたいんだよ」「バッハに会ってみたいんだ」というのはマロからよく出るフレーズである。
ヴァイオリニストとしてのマロへの賛辞も多い。2017年のN響ロンドン公演、マーラーの交響曲第6番の批評ではマロが弾いたコンマスのソロについて「神がかり的(ineffably divine)」と書かれていた。オケのコンサートの批評でコンマスのことが取り上げられることは極めて稀だ。
コンマスとしての仕事ぶりはオーラ全開の存在感に加え、演奏中はオケのあちこちに視線を配り、オケ全体をリードしているのがよくわかる。また何人ものオーケストラ奏者、指揮者、ソリストからマロのコンマスとしての能力を絶賛する話を聞いた。マロがオケの前に座るとオケには安心感と良い緊張感が生まれるという人もいる。
コンマス以外でも室内楽やソロのコンサート、昭和音楽大学はじめ教育者として後進の指導など、マロにしかできない価値ある仕事でたくさんの人に音楽の素晴らしさを伝えている。
1984年にウィーンで初めて会った時、マロの演奏は聞かなかった。おもしろくて良い人だな、と思い熊本にアマオケの指導で呼んだ。その後、熊本に何回きたかわからないが、付き合えば付き合うほどマロの素晴らしさを発見し感銘を受け続けている。
SAKAMOTO ISSEI
坂本一生
熊本生まれ熊本育ち。36年間、中学校教師(理科)を続けながら、アマチュアオーケストラ活動、コンサート企画、マロ塾(マロさんの指導公開)などクラシック音楽の魅力を広める活動を続けてきた。
2016年4月熊本地震後に立ち上がった「くまもと音楽復興支援100人委員会」の共同代表として被災地に音楽をお届けする”音楽の炊き出しコンサート”、2017年から3年連続で開催した”熊本地震復興祈念コンサート”(復活、第九、ヴェルディのレクイエム)を行う。
2020年から2022年まで3年間開催された「くまもと復興国際音楽祭」では、プロデューサーとして企画・制作した。2022年9月、熊本にルーツを持つ指揮者ケント・ナガノを招聘。
2023年7月、これまでの活動での経験、ご縁を活かして株式会社オフィスMGFを設立。”クラシック音楽の素晴らしさをまだ知らない人たちに伝える”ことに集中していく。